ユダヤ式子育てのゴールは、子どもが「幸せだった」と思えること
先に、ユダヤの考え方では子育てと教育を分けます。子育ては「子どもが幸せに生きていくお手伝い」、教育は「子どもが正しく成長して豊かになるお手伝い」です。つまり子育てのゴールは幸せ、教育のゴールは豊かさ。ここを取り違えないことが出発点です。
だから「医者にした」「経営者になった」は子育ての成功ではありません。何かの条件を満たしたら成功、ではなく、子どもが人生を終えるときに「自分の人生は幸せだったな」と思えるかどうか。すべてはここにかかっています。お金の要素も教えますが、それ以外もいっぱい教える。お金は人生の7分の1にすぎない、と教わりました。
もう一つ、ユダヤの家庭では「幸せ」の中身も教えます。幸せは感情や状態ではなく、自分でそう定義づけするもの。同じ出来事にどんな意味をつけるかで幸せかどうかが変わる(意味付け)。そのために、ないものではなく今あるものに焦点を当てる(現状感謝)。この2つは大人にも子どもにも同じです。
土台は3つ。年齢が変わっても、やっていることは同じ
ユダヤ人の子育ては、大きく3つの土台でできています。乳幼児でも思春期でも、方向性は全部同じで、年齢によって起きる問題と具体的なやり方が変わるだけです。
- 質の良い「参考材料」を与える
参考材料とは、自分の目で見たもの・聞いたもの・体験したものの総称です。結果は行動から、行動は価値観(行動基準)から、価値観は参考材料から生まれます。だから価値観を変えようとするより、参考材料を入れ替えるほうが確実です。教育とは、質の高い参考材料を与えること。 - 無条件の愛を「持つ」ではなく「持つと決める」
愛は自然に湧いてくるものではない、と教えられました。相手と自分の違いを理解した上で、それでもなお相手を受け入れる。どんな状況になっても自分だけはこの子の絶対的な味方だと決めるから、愛は出てきます。 - 自分で考える習慣(自立思考)をつけさせる
自立思考とは、自分で正解を作っていく力。世の中に一つの正解はなく、人によって条件が違うから、自分にとっての正解を自分で作れる子にする。
3つのうちどれか一つでも欠けると良くないことが起きるし、3つさえ守っていれば悪いようにはならない。講義ではそう話しています。
乳幼児期:言葉がけで「あなたは愛されている」という参考材料を渡す
乳幼児のときにやることは一つ、言葉がけです。まだ意味が分からないから話しかけなくていい、ではありません。言葉は音で、音は振動なので、意味が分からなくても伝わります。「えらいね」「かわいいね」「ええ子やね」と、意識して話しかける。娘が2歳のころ、僕はそれを先生に注意されました。
この時期に与える参考材料は、「あなたは愛されている」です。人が問題行動を起こすとき、その原因のほとんどは愛情を受け取れていないこと。これは原則として教わりました。愛情が不足していると、幼少期から思春期のどこかで必ず問題行動として出てきます。
気づかずにやってしまう「サイレント否定」
否定しているつもりがなくても、相手にとっては否定になっている言葉があります。ユダヤの親はこれを徹底的に避けます。
- 「そんなことしてると置いていくよ」。子どもは「条件を満たせばこの人たちは自分を平気で見捨てる」と受け取ります。自分の主張を口にすると存在を否定される、という参考材料が入り、発言できない子になる可能性があります。
- 「100点を取ったから偉い、さすがうちの子」。裏を返せば「100点でなければうちの子ではない」。条件付きで褒めることは、実は存在の否定につながります。
- 「今日の服はかわいいね」。普段の服はかわいくない、と言っているのと同じです。細かいことですが、ここまで気にします。
代わりに使う言葉は、「生まれてきてくれた、それだけで偉い」「生きているだけで偉い」。特別な人間になる必要も、何かを成し遂げる必要もない。何をしても受け止められる状況を作ることが、愛を渡すということです。
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幼児期(4〜6歳):答えを教えない。知的好奇心を邪魔しない
言葉がある程度通じるようになったら、やることが増えます。自分の頭で考える習慣です。ユダヤ人はこれを「知的好奇心を邪魔しない」と言います。人が成長するのは、自分の頭で考えたときだけだからです。
親が答えを言うと、子どもは親の知識の枠に閉じ込められます。答えを言わなければ、親を超えていきます。だから親が自分自身にルールを課します。質問には答えない。していいのは「あなたはどう思う?」と聞き返すことだけ。僕もユダヤの先生に、ビジネスの相談をするたびに「君はどう思う?」「君だったらどうする?」と返され続けて、自分で考える力が数十倍になりました。
この時期に教える「葬式ベース」
人生では通信簿を2回もらう。1回目は学校で、2回目は亡くなったとき。1回目の良し悪しはどちらでもいいが、2回目が低いのは問題だ。ユダヤ人は言葉が通じるようになると、まずこれを教えます。亡くなったときに周りの人にどう言われたいか。そこから逆算して生き方を決める。そして人生の通信簿を上げる唯一の方法は人に貢献することだと教えます。ユダヤの教えは、お金の教えである前に、こういう愛情ベースの教えです。
思春期(9〜18歳):反抗期の意味付け・使命・ポイント制度・叱り方
反抗期は「成長」と意味付けする
思春期になると必ず反抗期が来ます。ユダヤで最初に教わったのは、反抗期とどう向き合うかでした。ユダヤの格言に「出来事に意味なんてない。自分がそれに意味をつけるまでは」があります。「裏切られた」と意味付けすれば対応は悪くなる。「自分の考えを持ち始めた=成長・自立」と意味付けすれば、優しくなれる。反抗とは、親の考えと子どもの考えが違うというだけのことです。
13歳で「使命」を決めさせる(5分で)
ユダヤ人は13歳で成人し、そのとき人生の使命を決めさせられます。お葬式のときになんと言われたいか(葬式ベース)から逆算して、命をどう使うかを決める。かける時間は5分です。ほとんどの人は考えたことがないから決まらない。だから未完成でいいから形を作る。「ないものは進化しない」からです。毎年の誕生日に書き直してもかまいません。自分で書いた使命があると、親は「自分でこう書いたけど、今の過ごし方はどう思う?」と聞けるようになります。
お小遣いとプレゼントをやめて、ポイント制度にする
思春期に渡したい習慣は、努力したら報われる、自分で勝ち取りに行くという習慣です。この習慣をこわすのが、無条件のお小遣いとプレゼント。何も努力せずにもらえると、努力する気が失せます。ユダヤの家庭にはお小遣いも誕生日プレゼントもありません。代わりにポイント制度を使います。
- 1枚目:子ども自身に、親にできる貢献(お手伝い)を書かせる。普段考えていないので、驚くほど書けません。
- 2枚目:欲しいもの・やりたいこと(ご褒美)を書かせる。こちらは無限に書けます。
- 3枚目:ペナルティを親が書く(人を叩かない、暴言を言わない、歯を磨かずに寝ない など)。年齢で変えます。
- 4枚目:集計表。その場ですぐ記入します。
それぞれに点数をつけます。お手伝いは労力・時間・リスクに応じて高く、ご褒美は必要な点数を、ペナルティは減点を。バランスは「少し厳しい」くらいがちょうどよく、簡単すぎると一撃で終わり、難しすぎると一生届きません。導入前に必ずメリットとデメリットを説明して子どもの同意を取ること(お小遣いはなくなるが、努力すれば何でも手に入る)。そして無条件に与えることをきっぱりやめること。これが一番の苦労でした。
ポイント制度を回すと、子どもは「どうすれば人に喜んでもらえるか」を自分で考え始めます。節約を覚え、新しいお手伝いを開発し、不平不満が減ります。手に入らないのは親がケチだからではなく、自分の頑張りが足りないからだ、と思えるようになる。究極の自立思考です。
叱り方:ながら叱りをしない・理由を話す・正確に復唱させる
- ながら叱りをしない。食器を洗いながら「片付けなさい」では、愛を感じません。「ちょっと座って。話がある」と向き合って叱る。
- なぜ(Why)を話す。歯を磨かない子は、磨かないデメリットを分かっていないだけ。重要性を伝えて「あなたはどうしたい?」と聞き、自分で決めさせる。
- 正確に復唱させる。「食べた後は食器をシンクに入れて、お湯につけておく」を、一言一句言えるまでやり直す。アウトプット前提のインプットになるので、話の聞き方が変わります。僕も先生に、栄養の話を一字一句言えるまで何度もやり直させられました。
魚ではなく釣り方を。少し難しい課題を渡して、信じる
賢者の話があります。飢えた村に魚を与え続けた賢者の村は、魚が尽きたとき恨みながら滅び、釣り竿の作り方と使い方を教えた賢者の村は栄えた。お小遣いそのものではなく、お小遣いをもらえる方法を渡す。そして人が急激に成長するのは負荷(痛み)がかかったときなので、失敗してもいい時期に、少し難しい課題をわざと渡します。最後に原則を一つ。人は信じられた通りの人物になる。5歳だからできない、は親の思い込みで、親が可能性を信じると意外とクリアします。
まず「60点」を出させる:家のルール・罰則・叱る基準・親の役割分担
不登校や引きこもりの相談が多いのですが、何ができていないのかというと、60点の土台です。人が成果を出すには「60点」と「120点」の2段階があり、野球なら120点は甲子園、60点はキャッチボールができること。いきなり120点は目指せません。まず60点を出すと意思の力(やるぞ、頑張るぞと思って動く力)が育ちます。
60点を出させる方法は簡単で、ルールを徹底的に守らせることです。ルールは人を縛るものではなく、成長の道しるべ。学校のルールを守ったから、私たちは読み書きも計算もできるようになりました。ルールを守らせるには罰則が必要で、家庭では「親がちゃんと叱る」ことがそれにあたります。叱れば子どもは嫌な気持ちになるし、少し嫌いになります。それでも、子どもの一度きりの人生のために、嫌われる覚悟で叱る。親の役割は子どものご機嫌を取ることではありません。
- 叱る基準はルールだけ。テストで90点を取った子に「なぜ100点じゃないの」は理不尽な叱りです。60点は取れている。ルールの外で叱ると、子どもはルールではなく親の顔色を見るようになります。
- ルール外で叱る必要が出てきたら、その場で叱らずにルールを改定して、次から叱る。
- 役割分担。できれば父親が叱り、母親が逃げ場になる。相談に来る家庭の多くは、母子家庭か、父親が全く叱らない家庭です。
- 母子家庭の場合は、叱る役をやってくれる人を見つけて、そこに子どもを行かせる。学校の先生がいてくれれば一番いい。昔の厳しい学校が不良を更生させたのは、この役割を学校が引き受けていたからです。
60点が出せたら、次は120点。120点を目指す段階では、もう叱る必要はありません。そこから先が、答えを教えない教育とポイント制度の出番です。
大人の自分から。親が持っていない考え方は、子どもに渡せない
ここまで書いたことは、子どもよりも大人のほうが難しい。答えを言わずに待つのも、可愛い子どもに無条件に与えるのをやめるのも、一番苦労したのは親である僕でした。ユダヤ教育は学校ではなく家庭で親がするものなので、親が持っていない考え方は子どもに渡せません。
変わるのに何ヶ月もかかるわけではありません。癖なので、変わると決めた日に人は変われます。ユダヤの教えに「未来とは過去の延長線上である必要はない」があります。大人に必要なのは素直さ、つまり正解は一つだと思い込まないこと。社員教育と子育ては、勉強すればするほど同じだと分かります。
- 【天才を生み出す】ユダヤ人から学ぶ子育ての原理原則(YouTube「ゆだしん」)
- 【ユダヤ式】子育ての原理原則part② 子供に〇〇を持たせよ(YouTube「ゆだしん」)
- 子育ての原理原則 ①子育てと教育(YouTube「ユダヤアカデミー」)
- 子育て 幼児編(講義)(YouTube「ユダヤアカデミー」)
- 子育て 思春期編(講義)(YouTube「ユダヤアカデミー」)
数字について:人口0.2%(約1,580万人・2024年)はヘブライ大学 S. デラペルゴラ教授の推計、ノーベル賞受賞者の約2割は Jewish Virtual Library の受賞者一覧の集計です。動画で話している「世界の富の40%」「アカデミー賞の37%」などは集計によって数値に幅があるため、このサイトでは出典を確認できる数字だけを使っています。


